和歌山県白浜町臨海の京都大学瀬戸臨海実験所の久保田信准教授(60)は、遊歩道や展望台などが整備される白浜町臨海の番所山(標高約32メートル)に生息する国の天然記念物オカヤドカリを調査した。2011年5月から12年9月まで調べて404個体を確認。6~8月に多く出現することが分かり、久保田准教授は「観光客が持ち帰る恐れもあり、現状を把握して周知に努めたい」と話している。
久保田准教授は、番所山の遊歩道やその周辺3カ所で定点観察した。各ポイントに現れた個体に目印を付けて日ごとの出現数を調査した。11年11月まではほぼ毎日、それ以降は調査回数を減らして月3回程度調査した。2011年の出現ピーク時には、1日のさまざまな時間帯で最多6回の集中調査もした。
11年の出現数は計334個体あったが12年は計70個体にとどまった。これは調査日数が影響しているとみている。定点以外でもごく少数だが確認された。
オカヤドカリは、イボニシやイワカワウネボラ、バイ、ウニレイシなど18種の貝殻に入っていた。そのほとんどは調査地点近くの磯浜に打ち上がるものだが、大型になると京都大学白浜水族館で廃棄された、この海域に生息しないサザエの殻などに“宿”を依存していることも分かった。
久保田准教授によると、オカヤドカリ類がどの程度の頻度で宿を替えるかは不明だが、特大個体は見合う貝殻が少ないためか、交換頻度は低いようで、中には体が貝殻からはみ出した個体も見られた。
これらの成果は、日本生物地理学会で発表予定で、番所山再開発に取り組む白浜町にも情報を提供して保護に生かしてもらいたいという。
オカヤドカリ類は、陸生のヤドカリで、本州中部以南、鹿児島県から沖縄県など広い地域に生息、紀伊半島沿岸が自然分布の北限とされている。日本では天然記念物として保護されており、基本的に国内での捕獲はできない。
番所山は昭和初期~中期に動物園や植物園のある遊園地が開設されにぎわった。閉鎖後、施設は撤去され、荒廃が進んで危険箇所もある。白浜町は12、13年度に計1億5千万円を投入し、山内を安全に散策できるよう遊歩道や展望台、駐車場などを整備する。
【オカヤドカリの大型個体(和歌山県白浜町臨海の番所山で)】
(2012年12月07日更新)
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