2017年7月8日
○…種保存の悠久の自然世界のリズムにしたがって「ザワザワ、カチカチ」―。徳之島町の東北端に位置する金見崎海岸の通称「真崎(まさき)浜」で、国指定天然記念物オカヤドカリたちの〝産卵〟がピーク入りしつつある。繊細な気象条件も影響してか、例年に比べて遅れ気味。夏本番を告げる風物詩ともなっている。
金見崎海岸でピークに入ったオカヤドカリの一斉〝産卵〟行動=7日午後9時すぎ、徳之島町
住宅難?プラスチックキャップの宿貝代用も
○…オカヤドカリたちの一斉〝産卵〟の観察ポイントとなっている同海岸は、3年前に相次いだ台風の高波で自慢の美しい白浜の砂が大量に流出し、底部の造礁サンゴの岩が露出。観察者たちのアクセス面にも支障が。だが、長年保護・監視活動を続けている金見集落の寿山秋男さん(71)は「今年はピーク入りが例年に比べて遅れ気味。砂が減っても規模的には毎年変わらない」という。
○…7日午後9時すぎの同海岸。近くの民宿客たちが経営主のガイドで、安全に容易にアクセスできる地点までの観察を楽しんでいた。そして〝岩場〟と化したエリアを抜けるとそのメッカのピンポイント。すでにヤドカリの大群は砂浜を覆っていた。一部は、殻(宿貝)と体の間に抱えたままふ化させたゾエア幼生を礁池の海水に浸かって体を揺らしながら放出。その瞬間、赤紫色をしたボウフラ状の幼生の群れが、体をくねらせて泳ぐ姿が肉眼でも確認できる。
○…奄美群島国立公園の指定に続き、来年夏ごろを目指す世界自然遺産登録。希少な生態系への関心の高まりとも相まって、金見崎海岸は、観察者のさらなる増加が予想されるポイントの1つ。寿山さんは「ヤドカリたちは臆病もの。接近しすぎたり、大声で騒いだり刺激を与えるとUターンすることも。ゴミも捨てたりせずに大切に見守って欲しい」。
○…観察には無風状態の熱帯夜がベスト。気象条件で規模の差はあるが、今月下旬から来月上旬ごろまでは続くという。
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